クラスター解析 自由エネルギーを用い、温度を指定してクラスターの構造解析を行うことが可能に
分子集団構造の探索 膨大な可能性の中から、低エネルギーの構造を優先的効率的に探索
ファンデルワールス力や水素結合などの分子間力で弱く結ばれた分子集団の構造は、一般に非常に 大きな自由度があり、全面探索では対応しきれないほど多数の構造が予想されます。このような、極 めて自由度の高い分子集団の構造を調べることは、GRRM以外の方法では、分子間力が単純な力場モデ ルなどが適用できる系を除いて、ほとんど対応できていません。GRRMプログラムでは、l-ADDf法及び いくつかのオプションを用いることで、分子集団の構造を非常に効率的に探索することができます。分子集団の構造探索では、化学結合の組み替えを伴う反応経路探索とは違った特徴があるので、以 下の(1)-(3)の3項目をうまく考慮することで、探索効率を飛躍的に高めることができます。
(1) TSはほとんど意味をもたないので、EQだけを探索するEQonlyというOptionを利用できる。
(2) エネルギーが低いほど重要性が高いので、エネルギーの低いEQの周りだけSHS法を適用すれば よい。このため、Nlowest=nというオプションを利用して、低い方からn番目までのEQについてのみ、 その周囲のSHS探索を適用するように、探索の範囲を限定して探索効率を高めることができる。
(3) 分子集団の場合、エネルギー的安定性の類似した多数の構造が存在し得るので、そのうちどれ が最も存在確率が高いかは、分子集団が置かれた熱的環境に依存する。そのため、温度を指定して自 由エネギーの大小で熱分布を考える必要が生じる。そこで、EQの周囲のSHS探索を行う優先順位を、 温度を指定した自由エネルギーで行う必要がある。
以上のことを考慮して、LADD=5、Nlowest=24、T=0 KまたはT=400 Kで、水分子8量体クラスター の探索を行った結果を、上の図に示しました。左側が0 K、右側が400 Kでの自由エネルギーの低い構 造20個を、それぞれ、左上から右下へと並べてあります。0 Kでは、Cube状の構造など立体的な形状 をもつものの安定性が高いのに対し、400 Kでは、複数の環状構造が連結した構造の安定性が高くなっ ていることがわかります。この例からわかるように、GRRMプログラムを利用すると、種々の構造が多 数存在するるクラスター構造の安定性が、温度によってどのように変わるかを調べることができます。