新 GRRM プロジェクト 情 報
新物質の量子化学探索
化学の世界の新物質を量子化学計算で発掘するプロジェクトを進めています。 炭素には、黒鉛(グラファイト)やダイヤモンドに加え、フラーレンやカーボンナノチューブ、さらには黒鉛層1枚のグラフェンがあり、 最先端の物質科学・ナノテクノロジーの関心の的となっています。このほどさらに、当研究所の量子化学探索プロジェクトによって、 多角柱型のPrism-C2n、Prism-Carbon Sheet、Prism-Carbon Tube、Wavy Carbonが、新型炭素として発見されました。これらの新型炭素は、6角形や5角形を 基本骨格とする従来型の炭素とはまった異なり、四角形を基本骨格とする結合様式をとっていて、従来の常識を超えた新物質として注目を集めています。理想的「エネルギー貯蔵物質」の探索
エネルギーの吸収・放出に際し外部からの物質補給や外部への物質の廃棄をまったく伴わない反応過程を利用すると、 「ゼロ原料補給」「ゼロ廃棄物」が実現され、宇宙力にも最適な、理想的な「エネルギー貯蔵物質」が得られます。異性化反応では、物質の化学組成がまったく変化しないので、物質の補給や廃棄を伴いません。しかも、 異性化で相互変換する異性体の中には、大量のエネルギーを蓄えたもの(エネルギー貯蔵異性体)も存在します。このため、 エネルギー貯蔵異性体を探索し夢のエネルギー貯蔵物質を発掘することに期待がもたれます。
参考文献:「化学構造のエネルギー分布」大野公一、豊田研究報告第66号
「埋蔵分子」発掘プロジェクト
原子の集団で作り得る分子は、ほとんど無限の可能性がありますが、そのうち、実際に人類が手にして いるのは約1億種類ほどに限定されています。このため、人類がまだ手にしていない未知の分子が、 いまだに膨大な数、眠っていると予想されます。このような、いわば「埋蔵分子」とよぶことのできる 未知の分子を、GRRMプログラムを用いて発掘しようというプロジェクトが立ち上がり、 研究活動を展開しはじめました。(関連サイト) → データ中心科学リサーチコモンズ:データ中心ケミストリ
(関連記事)「朝日新聞科学の扉:ビッグデータを生かす」(2015年10月18日)
研 究 発 表 要 旨
「埋蔵分子」発掘プロジェクト(佐藤寛子, 小田朋宏, 中小路久美代, 宇野毅明, 田中宏明, 岩田覚, 大野公一:Interaction2014,東京)
研 究 成 果
公開ソフトウエア:化学反応経路マップの可視化 RMapViewer (2014年7月11日公開)(佐藤寛子, 小田朋宏, 中小路久美代, 宇野毅明, 田中宏明, 岩田覚, 大野公一)
超並列GRRMの開発
現在リリースされているGRRM1.22及びGRRM11・GRRM14は、いずれも1つの計算機(1 node)内でしか動きません。 GRRMプログラムに搭載された探索アルゴリズムは、使えるコア数が増えれば増えるほど、 探索の並列処理が高度に行われる性質があります。そこで、計算機(node)間の壁を超えて、 GRRMによる探索を並列化する新手法(超並列化)の開発に期待がもたれます。 GRRMの超並列化の取り組みは、既に当研究所の中心プロジェクトの一つとして開始されています。研 究 発 表 要 旨
反応経路網の全面探索:GRRM法の超並列化(大野公一、岸本直樹、岩本武明: 第7回分子科学討論会、京都)
マルチノード対応GRRMプログラムの開発
(大野公一: 第16回理論化学討論会、福岡)
GRRM法の新展開: 一般最適化 GOPT と超並列 NeoGRRM の開発
(大野公一: シンポジウム「化学反応経路探索のニューフロティア2012」、東京)
量子化学探索の効率化と超並列化
(大野公一: 第15回理論化学討論会、仙台)