人工力誘起反応法(AFIR) 人工的に力を加えることで反応過程をすばやく探索します!
AFIR(Aritificail Force Induced Reaction) 反応物を人工的に押し付け反応過程を探ります
GRRMプログラム(GRR14以降)に、反応物どうしが離れた状態から互いに接近して反応する過程を探索する新技術、 人工力誘起反応法(Aritificial Force Induced Reaction法:AFIR法)が導入されました。 この方法は、GRRMプログラムに最初から搭載されているADD-Following(ADDF)法ではみつけにくい分子間反応過程を、 非常に簡単に探索できる方法です。上図の左上のように、AとBに分離した状態で、両者に人工的な力を加えてたがいに押し付け合います。 具体的には、AとBの距離、rABに比例する項(比例定数α)を余分にエネルギーEに加えてやると、 ポテンシャルの形が、右側の図の下の曲線のようになり、本来あるはずのポテンシャルの山(Barrier)がなくなって、 AとBが互いに谷底(AB)へと落ち込みます。 つまり、AとBの間に人工的に力を加えたことになり、AとBがたやすくくっつくことになるのです。
このようにしてAとBの反応過程を素早く探索できますが、その結果得られる反応経路やエネルギーは、 人工力を加えたものですから、現実のものとは違うはずなので、そのままでは困ります。 けれども、探索過程で調べたポテンシャルの形に含まれる人工力を与える項の比例定数αを0に戻してやると、 そのポテンシャルは、人工力がない場合の、本来のポテンシャルになります。そして、 そのポテンシャル上にある遷移状態(TS)に相当するところを求めることも簡単にできます。こうして、 ADDF法では見つけることが難しかった分子間(原子間)の反応過程を、非常に簡単に調べられるようになりました。 上の説明図では、AとBの2つだけですが、3つ以上の場合にも、AFIR法を適用することができます。
なお、ADDF法でも、A→B+Cのように、1つの化合物が分解する過程は調べられるので、その逆過程B+C→Aを 調べることができますが、いろいろな探索結果の1つとして分解過程が得られるので、一般に探索されるまでに時間が かかります。また、ADDF法では、1つの化合物となっている状態から探索を始めますので、A+B→C+Dのように、 反応物・生成物ともに複数の化学種からなる反応を直接調べることはできませんでした。このような多成分反応の探索が AFIR法で可能になりなりましたので、複数の化学種に力を加えて探索する方法をMultiComponent(MC)-AFIRとよびます。