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WELCOME TO   Science Paradise ???


                    科学の楽園:お楽しみクイズ

                    第1問   「時針の追いかけっこ」
                    第2問   「違う1個はどれか」
                    第3問   「どこまで行けるか」
                    第4問   「身動きさせず捕まえる」
                    第5問   「沸騰石の死」
                    第6問   「俵の中の1粒を探せ」
                    第7問   「単位換算術」
                    第8問   「フラーレンのアイソトポマー」
                    第9問   「シクロヘキサンの立体構造」
                    第10問  「分子の影・光吸収法則」

                科学の楽園でクイズを楽しむと不思議な力が沸いてきます!Let's enjoy paradise quizzes!

科学の楽園:お楽しみクイズ答えはこのページ下方にありますが、独力で挑戦すると問題考究力・解決力がアップします。) 第1問 「時針の追いかけっこ」  ・時計の長い針と短い針は、ときどき重なります。  ・十二時に重なってから、次に重なるのは何時何分何秒? 第2問 「違う1個はどれか」  ・見かけ上そっくりの13個の球の中に1つだけ重さの違うものがあります。  ・天秤を3回だけ使って重さの違う球をみつけるにはどうすればよいでしょうか? 第3問 「どこまで行けるか」  ・1L当たり10km走る車とガソリン200Lがあります。  ・この車にはガソリンが20Lしかつめませんが、運んだ先の任意の場所に保管し、   またその場所に車がきたときに、全部で20Lの範囲内で補給できます。  ・この車と200Lのガソリンで、どれだけ遠くまで行けるでしょうか。 第4問 「身動きさせず捕まえる」  棒磁石が2本あります。N極同士やS極同士は反発し、N極とS極は互いに引き合い  ます。1本を机上に放置し、もう1本を近づけてくっつけるとき、机上の棒磁石  が少しも動かないようにしてくっつけるには、どうすればよいでしょうか。 第5問 「沸騰石の死」  丸底フラスコに液体を入れ、沸騰石を加えて加熱したところ、沸騰石から小さな  泡が多数出ながら穏やかに蒸留が続いています。ここで、加熱をやめ、しばら  放置して、蒸留がとまってしまった状態から、再び加熱して蒸留を継続させよう  としたのですが、今度は沸騰石がまったく機能せず、突沸してしまいました。  沸騰石は、一度冷やしてまうと、その機能が失われて「死んでしまう」のだそ  うです。それは、一体どうしてなのでしょうか。 第6問 「俵の中の1粒を探せ」  米1俵に1個だけ放射能汚染された米粒が含まれています。放射線カウンター  で検出できますが、1粒ずつ調べていては時間がかかってしまいます。どうや  れば、もっと簡単に放射能汚染された米粒をみつけられるでしょうか。 第7問 「単位換算術」  1電子ボルトは、何 kJ/molでしょうか。  (これは、大学レベルの物理化学の教科書に出てくる単位換算の問題ですが、   教科書や数表を見なくても、高校レベルの知識で、答えが得られます。) 第8問 「フラーレンのアイソトポマー」  ・化学組成が同じでも同位体組成が違う分子を、アイソトポマーといいます。  ・サッカーボール状のフラーレン分子C60にもアイソトポマーが多数あります。  ・フラーレンC60分子で質量数13の炭素原子を1個だけ含むアイソトポマーの   存在比率は、およそ何%でしょうか。  ・ただし、炭素の同位体の存在比は、質量数12の炭素が99%、質量数13   の炭素が1%、その他は0%であるものとします。 第9問 「シクロヘキサンの立体構造」  ・シクロヘキサンC6H12は6員環の各炭素原子に2個ずつ水素原子が結合しています。  ・その立体構造はいすのような形(いす形)であることが知られており、それより   は不安定ですが、舟のような形(舟形)の構造も知られています。  ・6員環の炭素原子に1から6までの番号を順番につけてシクロヘキサン分子の立体   構造を調べると、いす形と舟形はそれぞれ何種類あるでしょうか。 第10問 「分子の影・光吸収法則」  ・断面積Sで長さLの筒状透明容器に、断面積aの球状分子がN個入っています。  ・分子は当たった光を完全に遮断し、断面積aの影をつくります。  ・この筒状透明容器に入射した光の透過率はどうなるでしょうか。

お楽しみクイズの正解・コメント・☆~☆☆☆コメント+αβγ 第1問 1時5分27秒 (より正確には、1時5分300/11秒) コメント:12時から次の12時までに、長針と短針は11回重なるので、12時の次に  最初に重なるのは、(60×12)/11分後 ☆☆ この問題は、角度や角速度を使っても解けますが、上のよう考えると、角度 の概念や速度の計算をまったく使わなくても解くことができます。 ☆☆☆  第1問~第3問は、2009年3月に行った東北大学・最終講義の中で「論理考証の  目覚め(1)(2)(3)」として紹介したものです。  (1)第1問を解いたのは、小学3年のころです。小学生向けの学習雑誌にこの    問題が出ていました。長針・短針をもつアナログ時計の理解と、比例計算や    割り算・分数がわかっていれば、解けますので、小学生レベルの問題です。  (2)第2問を解いたのは、高校1年のころです。同級生が、家庭教師の人から    教わったという問題では、球の数が12個でした。自分で解いてみると、球    の数が13個でも、答えが出せることに気づきました。解くのに必要なこと    は天秤(さおばかり)の原理だけですので、小学生でも対応可能だろうと思    います。  (3)第3問は、大学4年のときに解きました。この問題は、大学の同級生が、    情報科学の研究室の人から教わったそうで、なかなかの難問ということでし    た。解くのに必要なのは、足し算・掛け算・分数の計算ですので、これも、    小学生でも解ける問題です。 第2問 1回目:4個・4個・5個に分け、4個ずつ天秤にかける。 (A)つりあったら、  残りの5個の中に異質な球があり、他の8個は全部同質で異質なものを含まない。 (B)傾いたら、  下がった方に重いのがあるか、上がった方に軽いものがあり、残り5個は全部同質。 2回目: (A)5個のうちの3個(a,b,c)と   他の8個の中の3個とを天秤にかける。  (A-1)つりあったら、5個のうち残っている2個(xとy)のどちらかが異質なので、   3回目;その2個のうちの1個(x)と、他の11個の中の1個とを天秤にかける。   (A-1-1)つりあったら、いま天秤にかけなかったyが重さの違う球。   (A-1-2)傾いたら、いま天秤にかけたxが重さの違う球。  (A-2)傾いたら、a,b,cの中に重さの違うものがある。   3回目:aとbを天秤にかける。   (A-2-1)つりあったら、cが重さの違う球。   (A-2-2)傾いたら、2回目(A-2)の(abc)と同方向に傾いた球が重さの違う球。 (B)1回目で上がった方の4個をpqrs、下がった方の4個をtuvwとし、この8個から、   3個ずつ(pqt)と(rsu)を天秤にかける。   (B-1)つりあったら、残りの2個vとwのいずれかなので、(A-1)の3回目と同様    にして、vとwのどちらであるかが決められる。   (B-2)傾いたら、その傾きの上下が1回目と同じかどうかで、pquかrstのいずれかに、    重さの違う球が含まれていることがわかる。いずれの場合も、1回目に同じ側かけた    2個(pqまたはrs)と反対側にかけた1個(uまたはt)のうちのいずれか。   3回目:1回目に同じ側にかけた2個を、1個ずつ天秤にかける。   (B-2-1)つりあたら、1回目に反対側にかけた1個が重さの違う球   (B-2-2)傾いたら、2回目と同じ側に傾いたほうが、重さの違う球。 ☆ ABの操作方法は、ここに示したやり方と違うやり方も可能です。 ☆ 13個の球では、一部に、重さの違う球が、重いのか軽いのかが決まらないケースが出ます  が、12個の球を対象にした場合には、重さの違い方まで、全部決められます。12個の球の場合  は、最初の分割を4-4-5ではなく、4-4-4にすることで対応できます。 ☆☆ この問題は、まず、3個の場合について考えてみると、1回で決まるとは限らない  ことがわかり、次の4個の場合を考えてみると、4個でも2回で決められることがわか  り、その考察の過程でいろいろ重要なことに気づきます。4個なら2回で決められるこ  とがわかれば、12個の球なら、4-4-4とわければ、よさそうなことに気づきます。  そのようにして、12個の球の問題を解決したあとで、5個の場合でも、ほかに正しい  重さの球があれば、2回で決められることに気づきました。 ☆☆☆ 高校の同級生から聞いた問題でしたが、帰宅後、上のように考えて解答を得ました。  翌日学校で、解けたことをその同級生に伝えたところ、意外にも何も聞いてくれず、非常  に不愉快そうであったのが印象的でした。問題が解けた以上の貴重な教訓が得られました。 第3問 426.651 km コメント: ガソリンが20Lしかなければ、1回20L給油しそのまま進めば、20×10=200km  のところまで行ける。  ガソリンが40Lなら、20L給油して満タンの状態に2回できるが、20Lを積んでそのま  ま遠くへ行くのでは、200kmまでしか行けないので、どこかにガソリンを保管して戻ってく  ることを考える。2度目に20Lを積んでガソリンを保管した場所につき、保管したガソリ  ンを給油すると、ちょうど満タンの20Lになるようにする。つまり、1往復半、片道3回  の移動で、20L出発点から移動したことになり、そうすれば、その20Lで、さらに200km  先へと進むことができる。このためには、保管場所に、20Lの3分の1を保管すればよい。  なぜなら、出発点から保管場所まで1往復半、片道3回分移動することになるので、出発点  から保管場所まで行くのに20/3L消費して、保管場所に20/3Lを保管し、残っている20/3Lを  積んだまま出発点に戻ると、ちょうど出発点でタンクが空になるから。したがって、ガソリ  ンが40Lあれば、(20/3+20)×10=266.67km先まで進むことができる。  60Lガソリンがあるときは、最初の20Lで、2往復半、片道5回分の移動で、出発点から、  20/5×10kmの距離に40Lのガソリンを移動させることができる。  80Lのガソリンをつかって、次の保管場所に60Lのガソリンを移動するには、3往復半、  片道7回分移動すればよく、その移動距離は、20/7×10kmとなる。  ガソリンが200Lあるときは、全部で10回満タンにして出発するので、9往復半、片道19  回移動し、移動距離20/19×10kmのところに、180L移動することができる。したがって、  このような操作で、20Lずつ減らしながら、徐々に移動すると、   (最終移動距離)=(20/19+20/17+・・・・+20/3+20)×10=426.651km  となる。 ☆ 200L全部を車につめれば、2000km先まで行けるが、この問題では20Lまでしか  車にガソリンがつめないという制限があります。 ☆☆ 人跡未踏の地を探検したり 宇宙旅行をするときなどに、必要な物資を運びながら遠く  へ行こうとするときには、これと似た状況になります。 ☆☆ 効率を最大にするには、無駄なところがないか分析し、無駄がまったくないように究  極的なやり方を探すことが肝要です。 ☆☆☆ この問題は、大学の同級生から聞いた問題ですが、そのニュアンスが、大変な難問  でちょっとやそっとのやり方では正解にはならない、ということでした。帰宅後、無駄の  ないやり方を考えたところ、すぐに答えがでましたが、高校生のときの教訓(第2問☆☆☆  参照)があったので、大学の同級生には、解けたことを伝えませんでした。 第4問 机上の棒磁石の真ん中に、真上からもう一つの棒磁石の端を近づけてくっつける。。 コメント: 机上の棒磁石の端に他方の棒磁石の端を近づけると、同じ極同士なら反発してしま  い、違う極同士なら、くっつく前に机上の棒磁石が引き寄せられて動いてしまう。ちょうど真  ん中なら、反発せず、引き寄せられもせず、まったく動かずにくっつく。 ☆☆ もちろん、机上の棒磁石を指で抑えるなどすれば動かないようにできますが、「放置」と  いう条件に反するので、題意には適しません。   この問題は、大学院生のころ野球大会でバッテリーを組んだ人と、試合に勝利したあと地下  鉄で研究室に戻る途中で、クイズとして問いかけられたものです。即座に、一方の真ん中に、  他方の端を近づければよいと答えたところ、そのように即座に答えた人はこれまでに一人もい  なかったといわれました。隣の研究室の人で、すごい腕前のキャッチャーで、何度かバッテリ  ーを組んだのですが、たいへん惜しいことに、数年後に亡くなってしまいました。 第5問 沸騰石には多数の細孔があり、空気が入っている。蒸留が始まると細孔の空気は、液体  の蒸気に置き換わっていく。温度が下がると蒸気が凝縮して液体になり、細孔は液体でふさが  ってしまうので、沸騰石の機能は失われてしまう。 コメント: まず、沸騰石があると、蒸留が円滑に進む仕組みが重要。   沸騰石がないときは、液体が沸点に到達して、液体の内部から蒸気が出ることができないた  め、液体が沸点以上に過熱された状態になりやすく、それが突沸の原因となる。   一方、沸騰石があると、沸騰石の細孔の中に閉じ込められていた空気が膨張し細孔からふく  らんで出てこようとする。液体の温度が沸点に達すると、細孔から膨らみかけた空気と液体と  の境界面で、液体の蒸気がどんどん細孔の空気中に入ってくるようになるので、細孔の出口か  ら、シャボン玉のように、泡が膨らんで液体中にちぎれて出てくるようになる。   細孔の出口から液体中に生じた気泡には、周囲の液体から活発に蒸発が起こるので、気泡は  大きくなりながら液体中上方へと浮上し、液面で外の空気に吸収される。   細孔の出口や液中を上昇する気泡の気液界面で蒸発が円滑に進むため、液体が過熱されるこ  とはなく、突沸は起こらない   次に、沸騰石の細孔中の気体成分の変化に注目することが重要。   細孔中の気体の成分は、最初は空気だけだが、液体から蒸気が入りはじめると、液体の蒸気  の割合がどんどん増して、やがてほぼ全部が、液体の蒸気になる。そうなっても、細孔の中は  気体(蒸気)で満ちた状態が続くので、細孔の出口での液体から細孔中の気体への蒸発は継続  し、細孔から気泡が出続けるため、蒸留は円滑に進行する。   このような状態で、蒸留している液体の温度が沸点以下に下がってしまうと、細孔中の気体  の温度も沸点以下になり、細孔中の気体は、全部凝縮して液体になってしまい、細孔中には気  体が存在しなくなる。いったん、こうなると、再び沸点まで温度を上昇させても、沸騰石の表  面から気泡は出てこないので、沸騰石の機能は失われ、加熱しつづけると、突沸してしまう。 ☆☆ 大学の化学実験のときに、「一度温度を下げてしまうと沸騰石は使えなくなる」というこ  とを、実験の指導者から、聞きました。すぐには、その理由に気づきませんでしたが、後に、  自分が大学の助手として実験の指導をやるようになったときに、この問題について「真剣」に  考えて見たところ、上のような解が得られました。 ☆☆☆ 実験書(例えば「化学実験」東京大学出版会)には「沸騰石は1度しか使えない」こと  は書かれていますが、その理由はまったく記されていません。いろいろ調べてみましたが、理  由を明確に記述している本は見つからず、その後も、上に示したことと同等の記述を見たこと  はありません。むしろ、理由を書いてくれていなかったおかげで、論理考証を楽しむ余地が与  えられたことを、大いに喜ぶべきかもしれません。 第6問 俵の米を、半々にわけながら放射線カウンターで調べていけば、簡単にみつけられる。 コメント: 米1俵は60kg、米粒1個は0.02g程度なので、米1俵に300万個の米粒が含まれる。  1個ずつ調べると1個10秒で調べられたとしても、3000万秒≒347日(約1年)もかかってしまう。   高性能な放射線カウンターなら、1俵まるごと調べても、放射能汚染された米粒の存在がわ  かるので、1粒ずつでなく、まとめて測定してもよいことに注目することが重要。   そこで、半々(およそ半分ずつでよい)にわけ、汚染されている方をさらに半々にわけて、  調べることを繰り返すと、    3000000=2のx乗  という式から、log(3000000)=xlog2、これを解くと、x=21.52となるので、  半々にわる操作は、22回程度。  半々に分けてカウンターで測る操作に、1回当たり1分かかったとしても、22分で  300万個の中から放射能汚染した米粒1個をみつけ出すことができる。   なお、放射線量は、その場所固有の値(バックグラウンド値)が大きいこともありうるので、  注意する必要がある。また、カウンターが測定対象以外の放射線の影響をうけないようにする  ために、鉛板で囲んだ場所に測定対象を置くなどの注意が必要になることもあり得る。 ☆☆ このような分割試験法を使うと、もっと膨大な数、たとえば、Avogadoro数程度の非常に  大きな数の対象でも、100回もかからずに、見つけられます。1個ずつ調べるのでは、全生  涯を賭けたとしても、100年=100×365×24×3600秒=3.15×109秒にしかなりませ  んので、うまく見つけられるとは限りませんが(恐らく見つからないまま生涯を終える)。 第7問 1電子ボルト(1 eV)は、96.5 kJ/molに相当する。 コメント: 1電子ボルトは、電子1個と同じ電気量(素電荷)を1ボルト(V)の電位差で加速  したときに得られる運動エネルギーの大きさであるから、素電荷をq クーロン(C)とすると、  1 eV=q CVであるが、1 CVのエネルギーは、電位差(電圧)の単位であるボルトの定義より、  1ジュール(J)に等しいので、1 eV=q J である。これを、1 molあたりに換算するには、  両辺にアボガドロ数(a)をかけると、1 molあたりのエネルギーは aq J になり、    1 eV は、aq J/mol=aq/1000 kJ/mol となる。  ここで、aqは電子1molの電荷に等しく、これは、ファラデー定数を f C/molと表したときの   fの数値、すなわち、およそ 96500 に等しい(これは、高校の化学で習う)。  よって、    1 eV は f/1000 kJ/mol=96.5 kJ/mol  であることがわかる。  (注)素電荷qの大きさは、ここで露に扱わなかったが、アボガドロ数aとファラデー定数の   数値fを知っていれば、     aq=f だから、     q=f/a=96500÷(6.022×10の23乗)=1.602×10のマイナス19乗 (単位は、C)   であることが、わかる。 ☆☆ 物理や化学の重要な定数の数値を全部覚えていなくても、いくつかの基本的な定数を覚え  ておけば、上の例のように、簡単な計算で求めることができます。   論文を読んでいるとき、換算が直ぐにできれば、書かれている数値の意味がよく理解できま  すが、いちいち数表を調べないと意味がわからないというのでは、理解の幅が狭くなってしま  います。電子ボルトで書かれているエネルギーを、化学反応の立場で理解しようとするときに  は、kJ/mol(あるいは、kcal/mol)に換算する必要が生じます。 ☆☆☆ 換算が面倒な場合、自分で公式をつくると大変便利。あるとき思いついたのですが、光  のエネルギー(電子ボルトeV単位)と波長(nm単位)の数値の積は、必ず1240になります。  これを利用すると、例えば、4 evの光の波長は 1240/4=310 nm だと、直ちにわかります。  この公式は、振動数νと波長λの積が光速度cに等しいこと、光(光量子、光子)のエネルギ  ーは、プランク定数hと振動数νの積hνに等しいことなどのほか、電子ボルトeVとジュールJ  の換算公式などを使うと出てきます。やや面倒ですが、一度きちんと自分で確かめてから、  1240 nm・eVを使ってみるとよいでしょう。そうすれば、何度も面倒な計算をしなくても済む  ようになります。(「量子化学演習」岩波書店p.9例題1.6参照) 第8問 33.16%(およそ3個に1個の割合) コメント: 炭素1個の質量数が13である確率は1%しかないが、C60には、炭素原子が60個  含まれるので、もっと確率は高くなる。ただし、1%×60=60%とはならない。正しくは、1つだ  け質量数13で他の59個が質量数12になる確率を求めなければならない。よって、     60×(0.01)×(0.99)59=0.3316=33.16%  と計算される。 ☆☆ フラーレンC60を発見したKroto先生のご自宅に泊めていただいたことがあります。その  当時はまだノーベル賞を受賞される前でC60は超伝導の分野で注目されていましたので、超伝  導の研究についてどう思うかたずねてみたところ、I like to walk in the dark.という  返事が返ってきたので私はとっさに、Otherwise you can't stand in the spotlight!  と言ったところ、たいへん喜んでおられました。その後、何度もお会いする機会がありました  が、大変残念なことに、鬼籍に入られてしまいました。 第9問 いす形は2種類、舟形は6種類 コメント: 炭素原子に番号をつけて区別しなければ、いす形、舟形、どちらも1種類。   ベンゼンC6H6では、6員環の炭素に1から6まで番号をつけて、その構造を調べても、正六角  形の炭素骨格でできているので、1種類しかない。これに対し、シクロヘキサンの分子構造は、  いす形、舟形、どちらも1種類ではない。   いす形では、6個の炭素原子は、いずれも同等であり、どの原子をいす形の頭の位置におい  て考えても一般性は失われない。そこで、1番の炭素をいすの頭の位置に置いてイスの横方向  から見ると、隣の2番と6番の炭素が、手前側にくるか、向こう側にくるかで、2通りの形が  あることがわかる。(一方のいす形から他方のいす形への構造変化をいす形の反転という)   一方、舟形では、対角位置の2個の炭素原子が舟の先頭と末尾の位置(前後の区別はない)  にあり、他の4個が2個ずつに分かれて、船べりの位置になっている。したがって、先頭・末  尾の2原子の選び方が3通りあり、舟形を横から見た場合に、他の4個の原子が、手前と向こ  う側の船べりのどちらに2個ずつ配置されるか、2通りあるため、舟形は、全部で6通りの種  類があることになる。   以上のことは、分子模型を用いれば、簡単に確かめることができる。 ☆☆、教科書の多くに、舟形がシクロヘキサンの異性体として存在しうるかのように書いてあり  ますが、理論的研究から、舟形は、反応の遷移状態であって、安定な物質として取り出すこと  はできないことがわかっています。また、詳しくシクロヘキサンの反応を調べた結果として書  かれた文献には、シクロヘキサンの2つのいす形の間の反転過程は、舟形を経て起こるとして  いるケースがあります。実は、シクロヘキサンの反転は、        いす形(A)ー半いす形(A)ーねじれ形ー半いす形(B)-いす形(B)  のように、舟形構造を経由しなくても起こり得るので、舟形を経由するというのは間違った記  述です。シクロヘキサンの反転過程を理論計算で詳しく調べてみると、ねじれ形の中間体が6  通りあり、半いす形の遷移状態を2回越える最短反転経路が6通りあることがわかります。理  論化学計算を利用して調べてみると、いろいろな教科書に書かれていることが、必ずしも正し  くないことがわかります。 第10問 T=e-Na/S  コメント: 透過率Tは、透過光量Qを入射光量Q0で割って得られる比率Q/Q0であり、T=Q/Q0   各分子は断面積aの影をつくる。透過率Tは、N個のどの分子の影にもならない確率である。   容器の断面内の1点が1個の分子の影と重ならない確率は(S-a)/S=1-a/S  N個の分子は互いに独立かつ乱雑に運動しているとすると、個々の分子の影になるかどうかは  独立事象であり、容器の断面内の1点がN個のどの分子の影にもならない確率は、(1-a/S)N  となるので、透過率 T=Q/Q0 は、次式で与えられる。 T=Q/Q0=(1-a/s)N=(1+x)N  ここで、-a/S=xとおいた。  分子の断面は容器の断面よりはるかに小さいため、S>>aなので、  |-x|は、1より十分に小さい量であることに注意し、次の公式を用い、    ln(1+x)=Σ(-1)n-1xn/n  展開式の高次項を無視して、 ln(1+x)=x とすると、   lnT=ln(1+x)N=Nx よって、   T=eNx=e-Na/S ☆ ここで得られた結果から、次式の光吸収の法則(Lambert-Beerの法則)が導かれます。    log10(I0/I)=εcL : Lambert-Beerの法則  ・入射光強度I0と透過光強度Iの比I0/Iは、透過率Tの逆数に等しい。I0/I=1/T  ・log10は、底の値が10である対数で常用対数とよばれる。   これらを考慮すると、上の式の左辺は次のように書きなおせる。    log10(I0/I)=-lnT/ln10  ・cはモル濃度であり、Avogadoro定数をNAで表せば、c=N/(SLNA)と書け、モル単位の   分子数をnで表せば、c=n/(SL)となる。これを用いると、上の式の右辺は、    εcL=εn/S   となる。以上から、   -lnT/ln10=εn/S   これを指数に直すと T=e-(εn/S)ln10   ここで、ε=NAa/ln10 とおけば、 T=eNx=e-Na/S   となり、この問(問10)の結果と一致する。  ・εは分子吸光係数とよばれ、分子1 molの総断面積を、自然対数と常用対数の   換算係数ln10=2.303で割った量であり、分子の種類で光の吸収(遮断)のされ方が   変わることを示している。 ☆☆ 光吸収に関するLambert-Beerの法則は、大学の化学実験のときに、習いました。  どうしてそうなるのか、理由がわからないまま10年近く経過し、自分が大学の助手と  して、化学実験の指導をするようになったとき、「真剣」に考えてみたところ、上の  ように、モデルを立ててみると、説明できることがわかりました。   分子は、光を完全に吸収する「黒体」ではなく、光吸収に波長依存性を示しますが、  Lambert-Beerの法則にしたがって、濃度依存性や透明容器の長さ依存性を示すことは、  上の「完全黒体分子」を用いたモデルで、十分に説明できました。  (「量子物理化学」東大出版会5章問題55とその解答参照) ☆☆☆ 分子が影をつくるモデルの考えを応用すると、自然対数の底であるNepier数      e = 2.71828 18284 59045 23536 02874 71352・・・・・  の現実的な意味が、つぎのように明確になります。  ・面積Aの平面図形を考える。  ・その図形をN個の小片に分割する。  ・小片を元の図形の上にランダムにばら撒く。  ・元の図形のうち小片で塞がれていない部分の面積をBとする。  ・小片の個数が十分大きく小片のばら撒き方が十分にランダムならば、       B:A=1:e   となる。    平面図形が1個の小片で塞がれない確率は、(1-1/N)、各小片の挙動は独立事象とみ  なせるから、N個では、そのN乗、よって塞がれない部分の割合は、          lim (1-1/N)N = e-1          N→∞             このことを利用し、小片をばら撒く実験で、Nepier数を「測定」することができる。  興味のある方は、是非、お試しください。
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