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Koichi OHNO の
 サイエンス アチーブメント 

 

 

 



ポテンシャル表面解析法の開発に基づく
理論化学の新パラダイム


                               大野 公一  


 化学現象の多くは、理論化学におけるポテンシャル表面の特徴に支配されている。
したがって、化学現象の解釈と予測には、ポテンシャル表面を効果的に解析する研究
手法の開発が重要である。                          

 Koichi OHNO は、ポテンシャル表面を解析する新たな研究手法を独自に開発し、理
論化学分野における新パラダイムを構築した。その研究は、大別すると      
 (1)分子内ポテンシャル:分子振動解析法の開発              
 (2)分子間ポテンシャル:分子表面解析法の開発              
 (3)反応系ポテンシャル:反応経路解析法の開発              
の3つのカテゴリーに属するポテンシャル表面に関するものであり、そのそれぞれに
おいて、従来の研究手法とはまったく異なる新しい研究手法を開発した。     

(1)では、分子振動のヒュッケル法ともよぶべき新手法(MO8法)を作りだし、六
角形の炭素環を含む多環芳香族炭化水素やハニカム状ナノカーボンネットワークの振
動状態および振動電子状態の予測計算を簡便かつ高精度で行うことを可能にした。ま
た、ポテンシャルの非調和性を効率的に考慮し、基本音のみならず従来取り扱いが非
常に困難であった結合音および倍音をも高精度で計算することができる振動解析法を
開発した。                                 

(2)では、原子をプローブに用いて分子表面特性を実験的に観測する2次元衝突電
子分光法(2D-PIES法)を開発し、さらに原子・分子間ポテンシャルの新しい
解析手法として重なり積分展開法(OE(overlap expansion)法)を開発して、
原子が分子表面に接近したときに、分子から原子に作用する力の硬軟粘着性を実験的
に明らかにするとともに理論的に評価することを可能にした。それとともに、分子軌
道の空間的広がりを実験的に決定することを可能にし、Dyson軌道とよばれるものと
分子のイオン化現象との関係を明らかにした。                 

(3)では、反応が関係するポテンシャル表面の特徴を分析して、反応経路がポテン
シャルの非調和下方歪(anharmonic downward distortion, ADD)に誘導される
ことを発見した。このADD に着目することによって、量子化学計算で求められるポテ
ンシャルエネルギー表面を、平衡構造から遷移構造や解離構造へと反応経路を登坂す
るアルゴリズム(超球面探索法:SHS(scaled hypersphere search)法)を創出
し、従来殆ど不可能とされていたコンピュータによる化学反応経路の自動探索を実現
することに成功した。これによって、不要な副産物をまったく生じない環境調和型省
資源合成経路や有用な新触媒・新化合物の分子設計に役立つ理論化学計算法が確立し
た。                                    


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