大学院講義「イオン化過程と電子分光」 大野 公一
シラバス (pdfファイル : 7kB)
この講義は、他大学の大学院でも(集中講義として)行ってきました。
通常の講義では、演者の研究を中心に最近のトピクスの紹介になりがちです。
現在行われている研究を丁寧に紹介するのもよいのですが、これから科学を
担う受講者達が、世界の最先端でブレークスルーすることを目標におくと、
新機軸を開く研究とは、どのような契機・着想・努力によって展開されるの
かという、先端研究の根源に関することが、とりわけ大切です。そこでこの
講義では、「イオン化過程と電子分光」というテーマで、化学現象の基本で
ある電子の授受に伴うイオン化過程とそれを個々の電子に着目して観測する
電子分光に焦点をあてつつ、研究のブレークスルーの背後にある実験装置の
開発やさまざまな新しい発想誕生の現場にかかわることを織り込んで説明し
ます。また、既知のことを踏まえ新たな着想を展開する柔軟な思考方法を身
につける原点となる簡単な演習を行います。
< 講義受講者の感想 >
大阪大学 山口東京理科大学 東北大学
<大阪大学>(集中講義と研究紹介)
※ 電子分光についてこの講義を聴くまで、まったく知らなかったので、非常に興
味深く聴くことができました。それぞれの実験装置でどのような工夫がされてい
るかといった話がとくに面白かったです。また、大野先生自身の研究の中でも、
どのように実験方法を改善するかという話がありましたが、この内容が一番印象
に残っています。
※ 学部生のときにオージェ電子分光で研究したので、とても親しみ深いく面白い
講義でした。人間には直接見えない分子軌道が、電子分光で見ることができるの
はとても興味深く、面白い分野だと思いました。
※ 複雑な装置の説明や研究に対する考え方など、教科書にあまり載っていないよ
うな話が聞けてよかったです。講義もわかりやすかったです。
※ 丁寧で大変わかりやすい講義でした。過去の歴史から、最新のものまで、理論
についても、順を追って話をしていいただけたので、たいへん参考になりました。
学生への教え方のうまい先生だなと、正直なところ、感じました。
※ ベーシックな所から教えていただいてお陰で、授業の内容がとても理解しやす
かったです。ひとつひとつの装置においても、それぞれの部分がどのように機能
しているかまで丁寧に説明して下さったのも思い白かったです。短期間でしたが
為になる授業だったと思います。
※ 先生の講義は基礎から教えてくださって、初心者の私にも全体的な概念を把握
することができました。原子軌道から、電子の励起とイオン化、スペクトルの形
成、分光装置の構造まで、詳しく説明していただき、理解できるようになり嬉し
いです。とくに黒板に図をかきながら説明することや、授業中のクイズはイメー
ジが深くなり、いい方法だと思います。分子軌道については、まだわからないこ
とはありますが、理解が深まり恐怖感が少なくなった気がします。本を読む時に
分かりやすくなって収穫が多いと思いました。ありがとうございました。
※ 光電子分光についてこれまで抱いていたイメージから、今回の講義によって、
より明確なイメージが持てるようになりました。
※ これまで光電子分光の原理についてあまり知りませんでしたが、基本から応用
まで歴史的な背景を加えながら詳しく教えていただいたので大変参考になりまし
た。質量分析についてもこの集中講義でいろいろと学べたので今後の参考になる
と思いました。
※ 今回の講義では全体を通してとくに二点において強く感じたことがありました。
まず、一点目は、それぞれの実験装置について詳しく説明されたことです。実験
装置というのは様々な創意工夫の下で特定の情報を引き出すために特化されてお
り、これは当たり前のことではありますが、私が今後研究を行うに当たって、他
人の研究資料を眺めた時にどのような工夫の下で製作されているかなど、着目す
る点を示して頂けたと思っています。また、二点目は、単位の換算です。今回、
先生は講義の中で丁寧にこの事を説明しておられ、様々な物理量を改めて考える
事ができ、全ての現象は関連していると感じました。全体を通して非常に面白く
興味を持って聞く事ができました。有難うございました。
※ 電子分光の種類や装置についての話も面白かったが、一番印象に残ったのは、
自分が基本と成る物理定数を軽く見ていることを思い知らされた事でした。今ま
で、必要になるとその意味も大して考えずに定数表を見て計算していたので、も
し手元になかったらどうするかと突きつけられた時にはショックを受けました。
今後、この事を頭の片隅に常においておき、物理定数を用いる度に、その意味に
ついても考えるようにしたいと思います。
※ 普段触れることのない実験技術のわかりやすい説明に感銘を受けました。今後、
実験の論文を読む時の参考にさせて頂きたいと思います。
※ 物理化学や電気化学の基本法則を駆使し、概算や単位の換算をたやすくできる
ようにすることは、研究者として大切なことであるだけでなく、さまざまな分野
を関連付け、広く見渡す視野を与えてくれることに気がつきました。本を見れば
載っているから・・・と、いろいろな知識を忘れ去っていた自分に驚く(あきれ
る)一方で、孤島になっていた知識が少しずつつながっていくことで理解が深ま
るのがわかりました。また、苦手だった分光学の分野に光が見えて、なるほどな
あ、と思えました。ありがとうございました。
※ とても基本的なことから詳しく説明していただいたので、大変分かりやすかっ
たです。専門外の分野でも、基礎から思い出させてくださるとありがたく、興味
をもって聞くことができました。
※ 電子分光装置の詳細を丁寧に講義してもらえて大変勉強になった。とくに分子
軌道と電子分光のスペクトルとを対応させる話が印象に残った。2次元ペニング
イオン化の実験から分子軌道の形や分子表面の硬軟までを理論と比較していると
ころが印象的だった。さらに、実験装置の改善も行い何十桁と測定感度を向上さ
せている点が技術的にも大変優れていると感心した。
※ 光電子分光を表面の研究に利用していますが、今回の講義を聴いて、これまで
頭の中で断片的であった知識が結びつくことが幾つかあり、大変有意義でした。
※ 一つ一つ丁寧に進んでいくので大変分かりやすかった。また、実験装置の図を
用いて説明されるとき、今まで気にもしていなかったことに意味があると気付か
された。例えば、装置の大きさ、冷却水と装置を電気的に絶縁してあること等々。
※ すごく丁寧で分かりやすかったと思います。阪大では分光の授業があまりない
のでとても役に立ちました。特に真空紫外光電子スペクトルの説明がよかったと
思います。また実験装置を使い始めたばかりの私にとってこの授業はまさにタイ
ミングのよいものでした。
<山口東京理科大学>(集中講義とコロキウム)
※ とても内容の濃い講義聴けて面白かったです。また、コロキウムでの話しはとて
も興味深く自分もやってみたいと思いました。
※ 講義を受け、とてもよかったと思っています。研究者としての心構え、考え方を
学んだ気がします。また、日頃、何気なく見ている文章や図に、意外と間違いがあ
ったりする事に気づかない自分がいることに気づきました。
※ 様々な装置について原理を交えて詳しく解説していただいたので、多少なりとも
理解することができました。また、これまで一通り勉強してきたことも、特に何も
考えずに飲み込んでいたということを今回の講義で実感させられてしまいました。
これを機会にもう一度考え直してみたいと思います。
※ 集中講義を受けて、とてもわかりやすく興味をもつことができました。今までは
とても難しい分野だという先入観があり、取っ付けない部分がありましたが、この
講義の分光の機器などの図面を見てとても興味が沸きました。学部の講義では見え
ていなかった分析機器の仕組みがよくわかりました。
※ 分光装置について、あまり教養がなかったので、すべて新鮮に思えました。また
資料に関して、丁寧な説明をしてくださったので抵抗なく頭に入ってきました。今
までは計算式を詰め込む方法で覚えてきたのですが、その成り立ちが納得できて、
式を自在に使うことができるようになりました。私の研究の中で分光計測器を使う
機会があれば、今回の講義の知識をフルに使いたいと思います。
※ 今回の電子分光装置のお話は、私が今後の研究に使用するであろう分析機器であ
ったので、大変ためになりました。今後の研究に生きてくると思います。
※ 二日間、ありがとうございました。解り易く楽しく聞かせていただきました。実
際に教科書等で調べればみつかる物理量でも計算して求めてみることで理解しやす
かったですし、分光の話を細かく習う機会はないのでとても貴重な講義となりまし
た。コロキウムでの化学の地図作りも大変興味をそそられる内容でした。コンピュ
ータを用いての探索という面白い方法、新しいことへの挑戦という私にとっても大
変すばらしいお話が聞けて、今後への意欲がますます湧いてきました。
※ 本講義を受け、途中の演習や先生からの質問では頭をひねることも結構多くあり
ました。恐らく講義は聴いていてもきちんと理解していなかった証拠だなと、改め
て感じました。また、先生が講義された内容は、これまで聞いた講義とは違う切り
口で話されるので、大変興味深く面白いと感じました。とくに、電子増倍管の話が
一番印象に残り、図の間違い探しをすることにより、自分の頭でよく考えたのでと
てもよくわかりました。通常、教科書を疑うことをあまりせず、つまりそれは、自
分の頭できちんと考えていなかったことの現れなのだと思いました。これを機会に
もっと真剣に本質を考えながらしっかりと頭を働かせて、勉強や研究にじっくり取
り組んでいきたいと思います。
※ 今回の特別講義で興味をもったのは、質量分析計と電子の質量の求め方のところ
です。私は分析の研究室にいるので装置の基本は知っていたつもりでしたが、説明
を聞いて初めて知ったことや理解しているつもりだったのにそうでなかったことを
思い知らされました。電子の質量は、今までは教科書の付録の定数を使っていたの
で求めたことがなく、定数として覚えようとしてやっていましたが、先生のお陰で
必要な式と一般的な定数さえ覚えておけば計算で簡単に求めることができるという
ことが非常にためになりました。また、コロキウムの話の異性体の見つけ方は非常
に面白く興味を持ちました。
※ 化学の世界のマッピングの話は興味深かった。人間の世界のように思いもしない
ような場所にバイパスを切り開く反応が見つかるのではないかと感じた。
※ この授業で一番印象に残っていることは、パワーポイントで説明していただいた
内容です。ここで私が学んだことは、何事もよく考えることでそのものの本質が見
えてくることにより、できないと思われたことが実現できることがあるということ
です。人はあきらめずにやると結果がついてくるのだなと思いました。
※ 講義の全般が装置の仕組みや原理などを詳しく説明された内容だったのですが、
私の研究でも装置作りをしていたこともあって、興味深く聴くことができました。
とくに興味を持って聴けた点は希ガス放電管を用いた真空紫外光を取り出す説明で
した。絶縁するための部品の素材をガラスなどにしたりするところはもちろんです
が、ガスは通さずに光のみを取り入れるという装置の仕組みに興味を持ち、実験装
置を組み上げる際には様々な工夫やアイディアが必要であると感じました。また、
HeI共鳴線の線幅の圧力依存性の話では、 単に強度を上げたり時間を伸ばしたりす
るだけではなく、そのメリットやデメリットを考えなくてはならないことを教わり
ました。今後、自分が使う装置についても深く理解し、どのような工夫が凝らされ
ているか考えながら研究活動を行っていきたいと考えました。
※ 電子分光を用いた分析装置は普段からよく使われるものであるにもかかわらず、
その仕組みや図についてはあまり見たことがなかったため、非常に興味深く聴くこ
とができた。電子増倍管のところで、電子1個の電流があまりにも小さすぎて測定
できないという話題も興味深かった。電子増倍管の説明図の誤りを正すクイズでは
最初気がつかなかったことも、原理を考えてみると理由が理解できて面白かった。
※ 講義の内容が電子分光なので自分の分野とはあまり関係ないと思って聞いていま
したが、電子分光を利用した装置の流れをおっていくにつれ、科学の工夫が随所に
ちりばめられていることに驚きました。新たなアイディアを生み、問題点が次々に
改善されて、さらによいものが創り出されてきた歴史を知り感動を覚えました。
今回の講義の中で特に印象に残ったことは、先生が行われた仕事の中で5桁の感
度不足を改善するために行った工夫です。1桁上げるにも、音を上げるような大変
な作業であると思いますが、結果として10桁の高感度化を達成したことには、非
常に驚かされました。これは各箇所を丹念に調べてそれが本当に適切かどうか疑い
をもって考え抜いた結果であると思います。あるものをそのまま受け入れるのでは
なく、なぜそうなっているのか根本を理解することの重要性を改めて感じました。
<東北大学>
※ 今までの経験からいうと、物理化学の講義は式などがたくさん出てきて、何が
なんだか分からなくなることが結構あるというイメージがありますが、今回の講
義は、非常に分かりやすいところがたくさんあり、勉強になったと思います。た
いていの講義は、話をして終わりであり、それだとどうしても眠くなったりして
しまうのですが、今回のように演習問題を出してもらえると、自分で手を動かし
て考えることもあり、眠くならないばかりでなく、理解度も上がるので、非常に
よいと思います。また、謎を解き明かそうとする研究者の姿勢みたいなものも学
べたので、物理化学の知識以外の大切なことも、非常に勉強になってよかったと
思います。
※ 一番の印象は実験装置の図がたくさんプリント中にあったことです。電子分光
の装置は、基本はほとんど同じでも、目的に応じて様々な工夫が加えられ、たく
さんの種類があることに驚きました。また、その図から何がわかるかも大切であ
り、装置中のある部分が何をするためのものなのか?また、装置中で電子・分子
・光子が移動する距離がどうなっているか?などのように、図からは、いろいろ
なことが考えられ、それを考える楽しさを知りました。有意義な講義でした。
※ 電子分光の仕組みや原理を知ることができて楽しかったです。電子のように非
常に小さなものを測定できることを学び、改めて人間の科学へのアプローチはす
ごいと感動しました。また、実際に知識としてある数値を用いて他のものの値を
導いたことで、順を追って考えること、暗記などせずに値を出せるのであるから
あせらずにゆっくりと考えてみることの大事さも改めて感じることができました。
※ 普段何気なく使っている装置の原理や仕組み、成り立ちの歴史に関して知識を
深めることができて面白かった。実際に装置を作る際にも非常に役立ちそうだっ
たので、この講義を受けられてよかったと思う。
※ この講義は「研究紹介」ではなく実験していく上で役立つ内容だったので、興
味深く聞くことができました。
※ 電子分光の原理と装置の仕組みについて詳しく学べてよかった。ただ、電子分
光が何に応用されるのかよくわかりません。もっと応用例が欲しかった。
(コメント:一般的な手法ですので応用の実例・可能性は多岐にわたります。
基本的応用の例は講義で示しました。最近の応用の実例・研究例は、レポートの
課題になっていました。)
※ 質量分析器や電子分光器など、名前は知っていても、具体的にどのようなもの
か知らなかったので、ためになり、理解を深めることができました。
※ 実験装置の詳細を扱った講義は他にはないので新鮮でした。
※ 今回の講義は、電子分光の実験装置に関するさまざまな知見を与えてくれるも
のであったので理論研究を行っている自分にも、実験と理論を比較する上で、有
用な情報を含んでいたと思います。ただ、内容が装置にかたよっていて、実験で
得られる化学的知見に関する部分が少なく、分野が異なる人には苦痛を感じる部
分もあったかと思います。(コメント:実験や研究の展開に関する方法論を重視
した講義でしたので、個々の化学的知見を紹介するゆとりが少なかったことは否
めません。それがどんなにすごいことであっても既に得られた成果そのものは、
個別的なことですので、それを知るには講演会や専門誌でよいでしょう。また、
どの講義なら分野的に退屈や苦痛を感じないかは、受講者の興味の広さにも依存
します。修士レベルの大学院講義では、興味の幅は広くしたいものです。)
※ 非常に分かりやすい講義でした。研究をする上での考え方を講義中のいろいろ
なところに挟んでいただいて、とても興味深く聴講できました。これが大学院の
講義だという感じがしました。他の教員の方にも見習ってほしいと思いました。
ペ-ジの先頭へ HOME